『踏んだり、蹴ったり、愛したり』深堀りレビュー!:大人の意地と本音が交錯する、最旬バグり系ラブコメディ!
「深堀りブックレビュー」のレビュー内容は、あくまでフカボリ(管理人)の個人的な感想・意見・書評です。あなたの考えと異なる部分がいくつもあると思いますので、そのつもりでお読みください。
今回は、壱屋すみ先生の『踏んだり、蹴ったり、愛したり』を深堀りレビューしていきます。

イメージ画像:深堀りブックレビュー作成
『踏んだり、蹴ったり、愛したり』は、現代を生きる大人たちの恋愛観と、抑えきれない「本能」を鋭く、そして魅力的に描き出したラブコメディの傑作です。
あらすじ:『踏んだり、蹴ったり、愛したり』
導入:バグり始めた関係
主人公は、仕事に情熱を注ぐアラサーのバリキャリOL・久栖佳帆(くすみ かほ)。
彼女の飲み友達の一人に、ルックスは良いが軽薄でチャラい整体師の五百森泰(いおり あきら)がいます。
佳帆は泰を「顔面百点、あとはクソ」と評し、お互いに軽口を叩き合う関係でしたが、ある夜、二人とも泥酔した勢いで一夜を共にしてしまいます。
編前半:大人の意地と「友達に戻りたい」
翌朝、佳帆は「大人の過ち」として冷静に関係を清算しようとしますが、泰は悪びれる様子もなく、むしろ関係を続けようと提案します。
佳帆は断固拒否し、「今までの友達関係に戻りたい」と要求しますが、泰は「いいよ、で、またしよ」と返すなど、二人の間には身体の距離と心の距離が乖離した、曖昧で不安定な関係が生まれてしまいます。
佳帆は理性のブレーキを踏みながらも、泰と会うことを止められず、周囲には内緒で「踏んだり、蹴ったり」な関係を継続します。
その中で、泰の真面目な仕事ぶりや、自分にだけ見せる素直な一面を知り、次第に彼の魅力に引き込まれていきますが、「このままでは本命になれず傷つくだけだ」と警戒心を強めます。
転機:第三者の登場と恋の自覚
そんな中、佳帆に誠実で穏やかな男性・加瀬が積極的にアプローチを始めます。
安定した未来と真摯な愛を差し出す加瀬の存在は、泰との不安定な関係に悩む佳帆にとって、大きな「選択肢」として浮上します。
加瀬の存在に危機感を覚えた泰は、初めて佳帆を誰かに奪われるかもしれないという強い焦燥感を抱き、自分の佳帆に対する感情が単なる遊びや独占欲ではない、真剣な恋愛感情であることを自覚します。
一方、佳帆もまた、泰といるときの感情の起伏こそが自分にとっての真実だと気づき、泰への「愛」を自覚します。
結末:本音のぶつかり合いと「愛したり」へ
お互いの気持ちを自覚した二人は、ついにこれまでの「踏んだり、蹴ったり」の関係にケリをつけようと、本音で激しくぶつかり合います。
大人としての意地や過去のトラウマを乗り越え、泰は「クズ」を卒業して佳帆に真剣な愛を告白し、佳帆も自分の気持ちに正直になり、その愛を受け入れます。
こうして二人は、周囲の目や一般的な恋愛の形にとらわれず、「踏んだり、蹴ったり」の応酬から、お互いを深く「愛したり」するという、彼ららしい大人の恋人関係へと進展していきます。
プロローグ:現代恋愛の「沼」をリアルに描く傑作
『踏んだり、蹴ったり、愛したり』の魅力は、単なる「ケンカップル」の枠に収まらない、緻密なキャラクター造形と、テンポの良い会話劇、そして何よりも「バグった距離感」がもたらす極上のムズキュン体験にあります。
物語は、激務に追われるバリキャリOL・佳帆(かほ)と、ルックスは良いが性根は「顔面百点、あとはクソ」と評される飲み友達・泰(あきら)が、酔った勢いで一夜を共にしてしまうという衝撃的な出来事から始まります。
この「ワンナイト」をきっかけに、友人という安全な距離を失った二人の関係は、ジェットコースターのように激しく、そして予想外の方向へと転がり始めます。
魅力を構成する二つの「核」:キャラクターの深層分析

イメージ画像:深堀りブックレビューで作成
本作の面白さを支えるのは、何と言っても佳帆と泰という「悪い意味でお似合い」な二人の主人公です。
① 泰(あきら):童顔クズ男の「ギャップ」と「本質」
泰は、女性に困らない童顔イケメンでありながら、複数の女性と関係を持つ「クズ男」として描かれます。しかし、彼の魅力はそこにとどまりません。
• 「クズ」の塩梅:
泰のクズっぷりは、金銭を要求したり、暴力を振るったりするような真の悪ではなく、どちらかというと「自覚のないチャラさ」と「自己中心的な甘え」に根差しています。
彼は仕事(整体師)を真面目に行い、自炊もこなす「普通の生活」を送る側面を持ちます。
この「クズだけど、生活力はある」というリアルな塩梅が、読者に「ギリギリ許せる」ラインを設定し、感情移入を促します。
• 佳帆にだけ見せる顔:
彼の最大の魅力は、周囲の女性には見せない、佳帆に対する「負けず嫌い」で「子どもっぽい」素顔です。
佳帆の容赦ない言葉にも動じず、軽口を叩き合う応酬は、彼らにとって一種のストレス発散であり、信頼の証。この特別な関係性こそが、泰が佳帆に対して抱く特別な感情の裏返しとして機能しています。
② 佳帆(かほ):強く、潔く、そして臆病な「アラサーOLの矜持」
ヒロインの佳帆は、恋愛漫画でありがちな純真無垢な「振り回されヒロイン」とは一線を画します。
• 圧倒的な「対等さ」:
彼女は泰のクズムーブに全く負けず、むしろ痛烈な言葉でやり返す気の強さを持っています。
一夜の過ちに対しても、冷静に自身の判断力を分析し、泰に一方的に責任を押し付けません。
この「クズ男に負けない強い女」の姿勢が、読者から高い共感を呼んでいます。
• 臆病さのリアル:
その強さの裏には、「どうせ本命になれない」という過去の経験からくる恋愛への臆病さや、「愛されることへの不安」が隠されています。
バリバリ仕事をする彼女の「大人としての意地」が、素直な感情を邪魔する壁となっているのです。
この「強さと弱さ」の二面性が、佳帆というキャラクターに深みを与えています。
「踏んだり、蹴ったり」の極上テンポ:会話劇の妙

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本作のもう一つの柱は、二人の交わすテンポの良い会話とワードセンスの素晴らしさです。
彼らの会話は常に軽妙で、悪態や皮肉が飛び交いますが、その根底には相手を「理解している」という信頼があります。
「半年あった友達関係に戻りたい」と言った佳帆に対し、泰が「いいよ、で、またしよ」と返す、ゲスいけれど本質を突いた応酬。
相手の本心を探り、一歩踏み込んでは退く「大人の駆け引き」が、セリフ一つ一つに凝縮されています。
この駆け引きの応酬こそが、読者を飽きさせず、ページをめくる手を止めさせません。
彼らの関係が「だらだら続かない」のは、この会話劇によって、お互いの感情の進展が「描写」として丁寧に描かれているからです。
「愛したり」へのグラデーション:バグった距離感の先にあるもの

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「踏んだり、蹴ったり」の関係が続く中、物語は着実に「愛したり」へと向かうグラデーションを描きます。
• 無意識の優しさ:
泰が佳帆にだけ見せる(自覚のない)優しさや、逆に佳帆が泰の不意打ちの行動にドキリとする瞬間は、二人の間に生じた「距離のバグ」が、実は「好意」という名のバグであることを示唆します。
• 身体の距離と心の距離の乖離:
肉体的な関係が先に進んでいるにも関わらず、精神的な距離が一向に縮まらない「ムズキュン」状態が続きます。
しかし、クライマックスに向けて、佳帆が自身の気持ちを潔く「自覚」し、それを「武器」にして泰に挑む展開は、読者に大きなカタルシスをもたらします。
• 周囲の評価:
周囲から「意外な組み合わせ」と見られながらも、読者には「性格の悪さがお似合い」だと感じさせるのは、彼らが一般的な恋愛のレールから外れた場所で、お互いにとって最高のパートナーであるという「宿命」を示しているからです。

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① 加瀬:”正しい未来” VS ”抗えない本能” の代理人
加瀬は、単なるライバルキャラクターではなく、佳帆と泰が抱える「大人としての理屈」と「恋愛における本能」の対立を体現する存在です。
◆佳帆への影響:自己評価の揺さぶり
佳帆は、泰のような自由奔放な「クズ男」と恋愛をしても、自分が本命になれず、結局傷つくだけだと理性で判断しています。
- 「損得勘定」としての加瀬:
佳帆にとって加瀬は、「ちゃんと愛してくれる」「安定した将来を約束してくれる」という、恋愛における”正しい(損をしない)選択”です。
彼は、過去の恋愛の失敗から身を守ろうとする佳帆の「防衛本能」が導き出した答えとも言えます。 - 「理想の自分」の投影:
泰と一緒にいるときの佳帆は、感情的で、軽口を叩き、時に自分から「踏んだり蹴ったり」の関係を求めてしまう、自制が利かない一面を持っています。
しかし、加瀬といると、周囲から理想的なカップルとして見られる「ちゃんとした自分」でいられます。
加瀬は、佳帆が社会的に望ましいと考える「理想の自分」を維持するための存在なのです。
◆泰への影響:独占欲の「自覚」
泰は、佳帆を「自分にとって特別な飲み友達」だと認識していましたが、それを恋愛感情として自覚することに躊躇していました。
- 「所有欲」の具現化:
加瀬が佳帆にアプローチすることで、泰は初めて「佳帆を失うかもしれない」という具体的な恐怖に直面します。
この恐怖は、彼が佳帆に抱いていた感情が、単なる友人や身体の関係以上の「独占したい」という強い欲求、つまり恋愛感情であったことを強烈に自覚させます。 - 「勝負」の相手:
泰の根底には強い負けず嫌いがあります。
加瀬という「優良物件」に対し、泰は自分の魅力(顔と身体の関係)だけで勝負ができないことを悟り、「人間性」や「本気の気持ち」で挑まなければならない状況に追い込まれます。
加瀬は、泰を「クズ男」から「真剣な男」へと成長させるためのトリガーの役割を果たします。
② 洋介:二人の関係性を映す「静かな鏡」
バーのマスターである洋介は、物語のテンポや雰囲気を落ち着かせ、二人の関係の異常さを相対的に際立たせる役割を担っています。
◆「第三者の視点」の提供
洋介は、佳帆と泰のケンカや痴話げんかを常にカウンター越しに見ています。
彼は、二人の関係の客観的な異常さを知る唯一の、かつ最も近い第三者です。
- 安定した観察者: 彼の視線は、二人の関係が「普通の友人ではない」ということを読者に再確認させると同時に、「この関係はいつまで続くのだろう」というサスペンスを生み出します。
- 「ホーム」の構築:
佳帆と泰にとって、洋介のバーは「酔っ払って何でも言える」という無防備な空間です。
この空間があるからこそ、二人は外では見せない本音や、仕事のストレス、心の弱さを吐露でき、それが二人の間にある特殊な信頼関係を築く土台となっています。
洋介は、その土台を静かに守っている存在です。
◆ 緩やかな「成長」の記録
洋介は二人の「始まり」から「変遷」をずっと見ています。
- 彼が二人にかけるごく短い言葉や、表情の変化は、「二人の距離が少しずつ縮まっていること」を物語の裏側で読者に示唆するヒントとなります。
例えば、二人の関係が最もこじれた時に、彼が静かに見守る姿勢は、読者に対して「この二人は大丈夫だろう」という安心感を間接的に与える役割も果たしています。
加瀬が「爆弾」として機能するのに対し、洋介は「安全地帯」として機能し、この二つの環境が佳帆と泰の恋愛を深く、複雑に展開させていると言えます。
壱屋すみ先生の「絵力(えぢから)」
ストーリーとキャラクターの魅力に加え、壱屋すみ先生の美麗な絵柄も特筆すべき点です。
特に、泰の横顔や手、首の描き方は非常に耽美で、キャラクターの感情の機微をセリフに頼らずとも表現する「描写力」に優れています。
感情が伝わってくるような迫力のある構図は、読者を二人の世界に深く引き込みます。
まとめ:大人の恋愛漫画の新たな傑作

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『踏んだり、蹴ったり、愛したり』は、単なる「顔の良いクズ男と強い女の恋愛」で終わらない、「意地」と「本音」のぶつかり合いを描いた作品です。
アラサー世代のリアリティ、恋愛への葛藤、そして人間的な魅力を余すことなく描き切り、読者に「早く続きが読みたい!」と思わせる中毒性を生み出しています。
クズ男好きはもちろん、「自立した女性の恋愛」に共感したい読者、「じれったいけどテンポが良い」関係性が好きな読者には、まさに理想の作品と言えるでしょう。
【付録】読者の反響・レビューコメント集
『踏んだり、蹴ったり、愛したり』は、そのリアルすぎる大人の恋愛描写と、刺激的なキャラクター設定で、読者から熱狂的な支持を集めています。ここでは、読者がどのような点に共感し、熱狂しているのか、その声をまとめます。
◆泰(あきら)への熱狂的な声
沼落ちOL:「顔面百点、あとはクソ」ってコピーが天才!まさに泰くんそのもの。でも、佳帆にだけ見せる不意打ちの優しさとか、負けず嫌いな子どもっぽさに完全に沼です。こんなクズ、現実にいたら絶対ダメなのに、漫画だと最高に愛おしい。
クズ専:泰の魅力は、ただのクズじゃない、ちゃんと仕事もして自炊もするっていう”リアルなクズ”なところ! だからこそ、「もしかしたら更生するかも」という希望が捨てられなくて、読者も佳帆と一緒に振り回されるのがたまらない。
低音ボイス推し:普段のチャラい口調からの、終盤で見せる本気の声と表情のギャップに撃ち抜かれました。あのシーンのためにコミックスを買ったと言っても過言ではない!
◆佳帆(かほ)への共感と支持
アラサー戦士:佳帆さんが最高。泰のクズ発言に対してちゃんと言葉で殴り返す気の強さにスカッとします。「どうせ本命になれない」って臆病になるところがリアルなアラサーの葛藤で、めちゃくちゃ共感できた!
独身貴族:恋愛より仕事に懸けてきた女性の「プライド」と「不器用さ」が痛いほどわかる。加瀬くんという安定を選ばずに、自分の本能に従って泰を選び取る潔さに、勇気をもらいました。
強い女好き:泰に依存しない、対等な関係を望む佳帆の姿勢が本当に好き。二人とも精神的に自立しているからこそ、あの特殊な関係が成立しているんだと思う。
◆物語全体への反響
ムズキュン中毒:身体の関係が先行しているのに、心の距離が全然縮まらないバグった距離感が本当にムズキュン!早くくっついてほしいけど、この不安定な状態が終わるのも寂しいというジレンマが最高でした。
会話劇ファン:壱屋すみ先生のセリフ回しが神!「踏んだり、蹴ったり」の応酬がテンポ良すぎて、一気に読み終えてしまった。大人の、皮肉と本音が入り混じった会話が好きなら絶対読むべき
リアリティ重視:駆け引きも、仕事の忙しさも、恋愛への期待と不安も、全部が生々しくリアル。特に加瀬くんが出てきてからの「正しい愛と本能の愛」の葛藤は、現代の恋愛観を鋭く捉えていると思う。大人に響くラブコメの金字塔です!
【レビュー後記】
◆大人の「理屈」と「本能」の狭間で
アラサーのバリキャリOLである佳帆は、仕事では完璧なのに、恋愛においては過去の傷から一歩踏み出せない「大人としての理屈」で自分を縛っていました。
一方、泰は「顔面百点、あとはクソ」と評される自由人でありながら、佳帆という特別な存在によって初めて、自身の感情を自覚するという「本能」に突き動かされます。
彼らの関係は、決して穏やかで優しいものではありません。
常に軽口や悪態が飛び交う「踏んだり、蹴ったり」の応酬こそが、二人がお互いに心を開き、唯一、素の自分でいられるためのコミュニケーションだったのです。
◆「クズ男」と「強い女」が証明したもの
泰のクズっぷりと、佳帆の容赦ないツッコミは、ときにコメディとして読者を笑わせますが、物語が進むにつれて、読者は二人の間に流れる特別な信頼と、抗いがたい引力を感じ始めたのではないでしょうか。
特に、誠実な加瀬の登場は、彼らの「曖昧な関係」の終わりを告げる決定的なトリガーとなりました。
この物語は、「優良物件」という世間が求める正しい愛の形ではなく、たとえ泥臭く、不器用で、周囲から見て「大丈夫?」と心配されるような関係であっても、自分が心から求めてやまない相手を選ぶことの尊さを証明してくれたと感じています。


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